『銀河鉄道999』は『約束』の焼き直し

投稿者: | 2010/06/27

宇宙戦艦ヤマトW』から始まったアニメブームは、麻上洋子Wから始まる声優ブーム、そしてコロンビアレコードのアニメ歌手たち(ささきいさおW水木一郎W堀江美都子W)を巻き込み、拡大していった。乱立した紙メディアでは徳間書店の「アニメージュW」が最大手で、これが後に『風の谷のナウシカW』を生む。ショップから派生した「アニメックW」はその連載のなかで、<オタク>という言葉を定着させる。東京ムービー新社では出崎統Wによる『宝島W』『ベルサイユのバラW』、日本アニメーションでは宮崎駿Wによる『未来少年コナンW』『赤毛のアン (アニメ)W』がつくられ、ブームが市場を拡大し、品質を向上させていった。

そんななかで老舗の東映動画が仕掛けたのが『銀河鉄道999 (アニメ)W』(監督:りんたろうW)だ。

テーマソングを歌うのが「ゴダイゴW」。特撮ファンには、「西遊記シリーズW」の主題歌を唄ったグループとして認知されており、英語の歌詞を担当した奈良橋陽子Wは、NHKの『基礎英語』『ラジオ英会話』に対抗して旺文社がスポンサードした『百万人の英語W』のパーソナリティとして知られていた。

原作は松本零士W。東映動画は、『太陽の王子_ホルスの大冒険W』や『どうぶつ宝島W』から10年近く長篇を作っておらず、社の威信を賭けた、鳴り物入りのプロジェクトだった。

劇場版第1作を、特別なものにしているのは、脚本家と音楽である。 脚本は石森史郎W。音楽は青木望W

この二人が、作品の情感を盛り上げ、メロドラマとしてのこの映画を突出した作品に押し上げている。・・・というのが、当時の認識だったのだが。

約束 (1972年の映画)W』(監督:斎藤耕一W)を観て驚いた。

『約束』(斎藤耕一/1972)

『約束』(斎藤耕一/1972)

同んなじやンけ〜ぇ!!

『約束』(萩原健一)

『約束』(萩原健一)

主人公は、妙な人なつっこさがある、ファニーフェイスの少年。萩原健一W

照れ屋なのに積極的で、繊細なのに大胆。

『銀河鉄道999』(星野鉄郎)

『銀河鉄道999』(星野鉄郎)

星野鉄郎は、原作の漫画やTVアニメよりも設定年齢が引き上げられた。

よくよく見ると、ファニーフェイスという点で、表情や顔の崩しかたなど、共通点が多い。

『石森史郎シナリオ集 「再会 パタゴに虹の燃える日」』のコラムには、こうある。

ある日、突然、東映動画の高見義雄プロデューサーから電話がかかって来た。 お願いしたい事があるのでお目にかかりたい、今すぐに私のところへ伺いたい。(漫画原作を)東映動画で長編アニメ化する事になり、今日の製作会議でシナリオは石森史郎に依頼すると決定したから、執筆して欲しいというのである。 何故、私にと問い返した。 会議では私が青春ドラマを書いているという点が評価され、話題になったとの事だった。

『約束』(岸惠子)

『約束』(岸惠子)

ヒロインは過去を背負った、謎の女。

どちらも「母」がキーワードとして出てくる。

坂本典隆のキャメラが、40歳間近の岸惠子Wの年齢を、残酷に写し出す。

『銀河鉄道999』(メーテル)

『銀河鉄道999』(メーテル)

オードリー・ヘプバーンWの声というよりは、『青い体験 (イタリア映画)W』の年上の女である、池田昌子Wによるメーテル。

どちらもメロドラマとして、音楽が重要な役割をし、甘いメロディが、観客をあおる。 『約束』の音楽は宮川泰W

ストーリーの類似点はこうだ。

  • 少年は歳上の女に一目惚れをする。
  • 少年も女も孤独を抱えている。
  • 列車の中でコミュニケーションを重ねる。
  • 歳上の女は大きな秘密を隠している。
  • 女は自分の過去に、墓参りする。
  • 中盤の事件で、少年は自分の目的を自覚する。
  • 女は、自分のしなければならないことと、少年への愛で葛藤する。
  • 少年は女に、一緒に住んでくれないかと言う。
  • 女は愛を受け入れはするが、絶対的な別れが起こる。

そして、愛を語るシーンは、同じ脚本家だけに、ひじょうに似通っている。

************************* 『銀河鉄道999』 *************************

『銀河鉄道999』(鉄郎とメーテル)

『銀河鉄道999』(鉄郎とメーテル)

◆プラットホーム

ゆっくりと煙を吐き出し、停車している999号。
じっとたたずみ眼を見交わしている鉄郎とメーテル。

鉄郎「……どうしても行くのか」
メーテル「……エエ、私は時の流れの中を旅してきた女……でも昔の体に戻る為には……」
鉄郎「じゃ、やっぱり冥王星へ……俺、待ってるよ……」

何も云わず、じっと鉄郎をみつめるメーテル。

鉄郎「……もう……逢えないのか……」
メーテル「(頷く)いつか私が帰ってきても、あなたは私に気がつかないでしょう……」

唇をかみしめてメーテルを見つめる鉄郎に顔を近づけるメーテル。そっと唇に唇を重ねる。
じっと動かない二人。……
999号の発車のブザーが鳴り響く。
ひとり列車に乗るメーテル。
じっとメーテルを見続ける鉄郎。

メーテル「私は貴方の思い出の中にだけいる女……あなたは少年の日の心の中にいた青春の幻影……」

列車の扉が閉まる。
ゆっくりと列車が動き出す。
鉄郎も列車を追って歩き出す。
窓ガラス越しに鉄郎に微笑みかけるメーテル。
鉄郎、笑顔で応えるがその顔は泣き顔。
ホームの端で立尽す鉄郎。
すべり出て行く列車。

鉄郎「……メーテル……」

鉄郎、猛然と線路に飛び降り、列車を追って走り出す。

************************* 『約束』 *************************

『約束』(岸惠子と萩原健一)

『約束』(岸惠子と萩原健一)

◆地下道 (夜)

梢から洩れる月光を浴びて……
視線がからみ合う螢子と中原。
どうしようもないもどかしさだけが中原をかりたてた。

中原「逃げよう!な、一緒に逃げよう……今なら大丈夫だ。な、逃げよう!」
螢子「(強く見返し)本気?」
中原「当り前だ。誰も知らない町へ行って二人だけで暮らそう……俺、結婚なんてんじゃなくたっていいんだ……俺、あんたの弟だってなんだっていい……俺、一生懸命働くからよう……な!」

中原は泣きながら訴えた。
螢子は中原の優しさがたまらなく嬉しかった。
螢子もそうしたい……しかし、出来なかった。
二人はただキラキラする眼と眼で瞶め合った。
静寂だったが、燃えるような時が流れていった。
螢子の唇が小さく動いた。

螢子「……ありがとう……」

◇ ◇ ◇

斎藤耕一・石森史郎・坂本典隆による映画は、次の『旅の重さW』につづく。

主演は、高橋洋子_(俳優)W。これを全面的にリスペクトしたのが、今関あきよしW監督で、高橋洋子の役を、三留まゆみWが演じている。 主題歌として、吉田拓郎Wの「今日までそして明日から」が使われ、この歌は昭和を象徴する曲として、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲W』でも使われた。

映画は、世代を越えてつながってゆく。

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(以下、2013/4/16に追記)

『銀河鉄道999』・・・ナレーションは『吹けば飛ぶよな男だが』をイメージか?

吹けば飛ぶよな男だがW』(脚本:森崎東W山田洋次W)を観ていたら、ラストシーンで「さらば…○○、さらば…○○」と連呼される。パクったとは言わないけど、『銀河鉄道999 (アニメ)W』は狙って使ったのだと思う。比較のために、並記します。(文字づらで見ると、そうでもないけど、溜めをつくって謡い上げる感じが、ソックリなんですよ)

『吹けば飛ぶよな男だが』(山田洋次/1968)

『吹けば飛ぶよな男だが』(脚本:森崎東・山田洋次/1968/弁士:小沢昭一W

弁士「かくて新しき希望をば目指して若者は船出せんとするのである。再び帰る日は何時の日か、さらば故国よ、懐しの人々よ、いざ行け若者よ、万里の波濤をのりこえて、恐るる勿れ若者よ、万国の労働者は君が同胞なり。さらば若者よ、いざさらば」

『銀河鉄道999』(りんたろう/1979)

『銀河鉄道999』(脚本:石森史郎W/1979/ナレーター:城達也W

「今、万感の想いを込めて汽笛が鳴る。今万感の想いを込めて汽車が行く……ひとつの旅は終り、また新しい旅立ちが始まる……さらばメーテル、さらば銀河鉄道999……さらば少年の日よ……」

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(2013/4/16に追記)

『約束』(斎藤耕一/1972)

約束 (1972年の映画)W』を観たときの私の驚きは、自明のことだったようです。「PLUS MADHOUSE 04 りんたろう」(キネマ旬報社/2009年12月28日初版)に、りんたろうWさんの発言が載っていました

脚本については、僕の希望を聞いてもらった。それで石森史郎さんになったんだ。なぜ、石森さんにお願いしたかというと、松竹で岸恵子とショーケン(萩原健一)がやった「約束」(’72年)という映画があって、これがもの凄くいいんだよ。メーテルと鉄郎の関係を描くのに、あの感性が欲しかったんだ。それで直接、石森さんに会ってお願いした。石森さんは、あの頃、アニメーションは全然やっていなかったから、「え、僕がアニメでいいの?」と言われたよ。「いいんです。あの感性でやってください」とお願いした。