自分史)『麦秋』から三幕構成へ…

投稿者: | 2010/10/16

今から20年ほど前、最後の自主制作8mm映画をつくっていたころ、頭の中に漠然とあったのは、小津安二郎W監督の『麦秋 (1951年の映画)W』だった。

『絢爛たる影絵』で高橋治Wさんが、 「『麦秋』はストーリーが書けない」 と記していた。あらすじが伝えられないのだ。あらすじを伝えても、それが映画の魅力と全く一致しない。

『麦秋』小津安二郎(1951)

『麦秋』小津安二郎(1951)

映画にとって、シナリオとは何なのか? ストーリーの面白さと、映画の面白さは、別のモノではないか? 【映画的】 なモノを目指したくて、物語を否定したかった。
(今から思うと、自分がストーリーを作れないことに対する、逃げだったと思う)
ストーリーを説明しても、その映画の魅力を伝えられない作品。台詞や物語ではなく、映像と音で感覚的に伝える作品。

イメージしたのは、前述の『麦秋』であり、大島渚W監督の『戦場のメリークリスマスW』だった。

『戦場のメリークリスマス』大島渚(1983)

『戦場のメリークリスマス』大島渚(1983)

幸い、つくった8mm映画は、PFF(ぴあフィルムフェスティバルW)の最終審査に残って、日比谷シネシャンテで上映された。しかし、無惨な反応だった。

自主制作であるから、自分のやりたいように、自分の感性にいかに忠実につくるかを優先した。
PFFはインディーズムービーのフェスティバルであるから、それで良いと思っていた。
しかし審査員は違った。観客のことを考えた作品づくりを要求された。
同時に、寝る人・出てゆく人が続出する会場で、私自身も自分に嘘をついていることを発見した。

観客に自分の作品を観てもらいたい!のだ。

もうアマチュアは終わりだと悟った。逃げていた【ストーリー】に取り組まねばならない。

岡田勲さんの紹介で「ストーリーアナリスト」講座を受講した。
講師のピーターが最初に言った言葉。その言葉で、【物語】を学ぶことへの偏見が、フッ飛んだ。

「これから話すことは、エンターテイメントの書き方です。アートとしての映画の書き方とは違います」

そうだ! 私がやってきたことは、アートだったのだ!!
商売としての物語は、形式があり、その型を学ぶことは、もっとも優先すべき基礎知識なのだ。

そして、あの、Three-act structure 《三幕構成》を知ることになる。

ハリウッドライティングで印象的なのは、【Act2】 への入り方と、【Teaser】 の重要性だった。

『トッツィー』シドニー・ポラック(1982)

トッツィーW』シドニー・ポラック(1982)・・・追いつめられた主人公が、起死回生を狙って変身する、【Act2】導入部の鮮やかな場面転換!!

『北北西に進路を取れ』アルフレッド・ヒッチコック(1959)

北北西に進路を取れWアルフレッド・ヒッチコックW(1959)・・・主人公が間違えられ、巻き込まれるなかで、決定的に犯罪者として知られてしまう、【Act1】から 【Act2】への転換のスムースさ!!

ハリウッド映画において、アイデアとは、【Act2】へと入ってゆく際の、期待値を意味する。
決して、クライマックスのどんでん返しではない。意外性は、【Act2】への展開にある。

『スター・ウォーズ』ジョージ・ルーカス(1977)

最も明確な 【Teaser】 はコレ。
スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望Wジョージ・ルーカスW(1977)・・・作品全体を通して、小さな反乱軍は、巨大な帝国軍に追われる。

ハリウッドライティングでいさぎよいのは、【Setup】 の考え方だ。
設定は全て 【Act1】 で出す。伏線の元は、最初の30分で出しておく。後出しはナシ。
ミステリーに限らず、すべてのストーリーで、最初に全部手の内を見せてから、その素材を駆使してドラマを組み立ててゆく。この態度が、シンプルで力強いストーリーラインを生んでいる。

結局、以下の3講座を受講する。

  1. 『ストーリー・アナリスト入門講座』(1999/5days:25hours)
    ピーター・エクスライン(Peter Exline
  2. 『ストーリー・ディベロップメント講座』(1999/3days:16hours)
    バーニー・リクテンシュタイン(Barney Lichtenstein)
  3. 『ハリウッドTVドラマライティング講座』(2001/5days)
    エリカ・バーン(Erica Byrne

『別冊宝島144 シナリオ入門』(シド・フィールドW)、『ストーリーアナリスト』(ティ・エル カタン)、『ハリウッド・リライティング・バイブル』(リンダ・シガー)と、三幕構成に関する本は種々あるが、どの本もピーターの講座で教え受けたことの部分を語っているに過ぎず、一冊で、三幕構成Wの概論を満たしているものは無いという印象だ。

最近の出版物では、『映画ライターズ・ロードマップ』(ウェンデル ウェルマン)と『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(シド・フィールド)が良書だと思う。