サイレントは豊かで楽しくて弾けている

投稿者: | 2011/12/01

シナリオセンターで八週間講座を受ける前、友だちに「シナリオって何を読めばいい?」と訊いた。シナリオ作家協会シナリオ講座を受けたことのある友だちは、「新藤兼人Wさんが、山中貞雄W伊丹万作W伊藤大輔 (映画監督)W読めと言ってた」と教えてくれた。3人のシナリオ集には、サイレント時代のシナリオが含まれている。

この10月・11月は、サイレント期の日本映画を、活動弁士W付きビデオで観ることについやした。意表を突く展開、細やかな洞察力、振幅に満ちた感情…、音以外(映像と文字)で伝えるために、純化され力強くあらねばならなかった表現。一番豊かだったかもしれない日本映画群がそこにあった。

多くの作品は図書館で借りた。東京には無料で利用できる機会が揃っている。

DVD「Talking Silents」シリーズ(マツダ映画社W)・・・港区立図書館
VHS「日本無声映画名作館」シリーズ(マツダ映画社)・・・台東区立図書館
VHS「アポロン活動大冩眞」シリーズ・・・新宿TSUTAYA及び港区立図書館
VHS「活弁キネマ」シリーズ・・・新宿区立図書館

今回観たものを、公開年順に並べると…

小雀峠 (沼田紅緑/寿々喜多呂九平W阪東妻三郎W/1923/澤登翠W
逆流 (映画)W二川文太郎W/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1924/澤登翠)
江戸怪賊伝 影法師W (二川文太郎/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1925/澤登翠)
雄呂血W (二川文太郎/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1925/松田春翠)
怒苦呂白井戦太郎W市川右太衛門W/1927/澤登翠)
弥次喜多 (1927年の映画)W 尊王の巻池田富保W大河内傳次郎W/1927/澤登翠)
弥次喜多 鳥羽伏見の巻 (池田富保/大河内傳次郎/1928/澤登翠)
忠魂義烈 実録忠臣蔵W牧野省三W山上伊太郎W伊井蓉峰W/1928/松田春翠)
血煙高田馬場 (伊藤大輔/大河内傳次郎/1928/松田春翠)
雷電 (牧野省三/根岸東一郎/1928/澤登翠)
放浪三昧稲垣浩W/伊丹万作/片岡千恵蔵W/1928/松田春翠)
浪人街W 第一話 美しき獲物マキノ正博W/山上伊太郎/1928/澤登翠)
崇禅寺馬場 (マキノ正博/山上伊太郎/1928/澤登翠)
浪人街 第二話 楽屋風呂 (マキノ正博/山上伊太郎/1929/澤登翠)
赤垣源蔵 (池田富保/河部五郎/1929/浜星波)
明け行く空斎藤寅次郎W水島あやめW/1929/澤登翠)
沓掛時次郎W辻吉郎W長谷川伸W/大河内傳次郎/1929/松田春翠)
血煙荒神山 (辻吉郎/大河内傳次郎/1929/浜星波)
大学は出たけれどW (小津安二郎/田中絹代W/1929/松田春翠)
野狐三次小石栄一W円谷英二W長谷川一夫W/1930/浜星波)
右門捕物帖 六番手柄仁科熊彦W/山中貞雄/嵐寛寿郎W/1930/松田春翠)
番場の忠太郎 瞼の母W (稲垣浩/長谷川伸/片岡千恵蔵/1931/松田春翠)
東京の合唱W小津安二郎W野田高梧W岡田時彦W/1931/美好千曲)
鯉名の銀平 雪の渡り鳥 (宮田十三一/長谷川伸/阪東妻三郎/1931/松田春翠)
御誂次郎吉格子W (伊藤大輔/大河内傳次郎/1931/松田春翠)
大人の見る繪本 生れてはみたけれどW (小津安二郎/斎藤達雄W/1932/松田春翠)
恋の花咲く 伊豆の踊子W五所平之助W伏見晁W/田中絹代/1933/松田春翠)
瀧の白糸W溝口健二W泉鏡花W入江たか子W/1933/松田春翠)
出来ごころW (小津安二郎/池田忠雄 (脚本家)W坂本武W/1933/松田春翠)
韋駄天数右衛門 (後藤岱山/羅門光三郎W/1933/澤登翠)
水戸黄門 来国次の巻 (荒井良平/山中貞雄/大河内傳次郎/1934/澤登翠)
浮草物語W (小津安二郎/池田忠雄/坂本武/1934/松田春翠)
水戸黄門 密書の巻(荒井良平/山中貞雄/大河内傳次郎/1935/澤登翠)
折鶴お千 (溝口健二/泉鏡花/山田五十鈴W/1935/澤登翠)
子宝騒動 (斎藤寅次郎/池田忠雄/小倉繁/1935/松田春翠)
剣聖 荒木又右衛門 (仁科熊彦/羅門光三郎/1935/松田春翠)

日本映画の全盛期は、1950年代中盤から1960年前後の、10年にも満たない期間だ。
それを支えたのが、サイレント期からの監督である、溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男Wマキノ雅弘Wら。そしてサイレント期に10代を過ごした、黒澤明W木下惠介Wたちである。

******************** 『子宝騒動』斎藤寅次郎(1935) ********************

『子宝騒動』斎藤寅次郎(1935)
ラストの闘いは、『七人の侍』を越えている!!
泥まみれになっての肉弾戦!! 黒澤明『七人の侍W』(1953)は、この作品のリスペクトかも???(うそ)

******************** 『雷電』牧野省三(1928) ********************

常勝の雷電(『雷電』牧野省三/1928)死の床にある雷電の母親(『雷電』牧野省三/1928)土俵での取組がはじまった(『雷電』牧野省三/1928)

雷電はあまりにも強いために人々からうとまれている。母の遺言で、次の試合は負けると誓わされる。負けるつもりだったのに、相手として現れたのは、相撲を見たこともないヒヨッ子。このヒョロヒョロを相手に、雷電は負けなければならない。
すばらしいプロット!!

若き役者時代のマキノ正博(『雷電』牧野省三/1928)

若き役者時代のマキノ正博(『雷電』牧野省三/1928)

対戦相手を演じているのが、役者時代のマキノ正博。細やかな動作と明快な表情で、技巧派の役者だったと納得させられる。この人ならば、監督として芝居をつけるのも、さぞや巧かったことだろう。

******************** 突貫小僧 ********************

突貫小僧『生まれてはみたけれど』小津安二郎(1932)突貫小僧『生まれてはみたけれど』小津安二郎(1932)突貫小僧『生まれてはみたけれど』小津安二郎(1932)
『生まれてはみたけれど』小津安二郎(1932)・・・I Was Born, But…

突貫小僧『出来ごころ』小津安二郎(1933)突貫小僧『出来ごころ』小津安二郎(1933)突貫小僧『出来ごころ』小津安二郎(1933)
『出来ごころ』小津安二郎(1933)・・・Passing Fancy

突貫小僧『浮草物語』小津安二郎(1934)突貫小僧『浮草物語』小津安二郎(1934)突貫小僧『浮草物語』小津安二郎(1934)
『浮草物語』小津安二郎(1934)・・・A Story of Floating Weeds

惹きつけられる圧倒的な魅力をもつ、突貫小僧こと青木富夫W(1923年生)。不貞不貞しい顔で、ドラマに重要なアクセントを加える。(ちんこかゆい)

******************** 高勢実乗 ********************

高勢実乗『血煙荒神山』辻吉郎(1929)

『血煙荒神山』辻吉郎(1929)

高勢実乗『国士無双』伊丹万作(1932)

『国士無双』伊丹万作(1932)

高勢実乗『水戸黄門 密書の巻』荒井良平(1935)高勢実乗『水戸黄門 密書の巻』荒井良平(1935)高勢実乗『水戸黄門 密書の巻』荒井良平(1935)
『水戸黄門 密書の巻』荒井良平(1935)

高勢実乗『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』山中貞雄(1935)

『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』山中貞雄(1935)

高勢実乗と古川緑波『東京五人男』斎藤寅次郎(1945)

『東京五人男』斎藤寅次郎(1945)

喜劇的に誇張された、動き・メイク・しゃべり方が際立つ、高勢実乗W

◇ ◇ ◇

映画が大衆を魅了し、産業として成立したわけが、活動写真Wを観ると理解できる。
映像表現の基本はサイレント映画Wにあると思い知らされた。


Pocket