2024 映画ベスト(まったく配信生活)
隣町のシネコンが、2023年秋に閉館になったあおりで、隣々町のシネコンへも足が遠のき、2024年は映画館で観たのは『Dune: Part Two』のみになってしまいました。以下は全て、配信での視聴。
まだ『SHOGUN 将軍』は観ていません。
三体(Netflix)

「こんな世界ならば、宇宙人に征服してもらったほうが良い……」という哲学(願望)が胸に痛い。「人体は無くとも、脳ミソだけあればOK」などの、SF的残酷さにヒリヒリする!! 世代を引き継いで人類の未来を思考する壮大さを、ファンタジーではなく、リアリズムで観せてゆく。
チャレンジャーズ(監督:ルカ・グァダニーノ)

ナタリー・ポートマンが『クローサー』で削除され、キルスティン・ダンストが『クレイジー/ビューティフル』で実現できなかった、女優の成長過程で通過しなければならない性的演技を、ゼンデイヤが軽々とクリアする快作!! アイドル映画であり、ぼんくらな男のバディものとしても楽しめる、ゆるくて自然なやりとりが素晴しい! 音楽もステキ!!
オッペンハイマー(監督・脚本:クリストファー・ノーラン)

科学者のバイオグラフィーを通し、研究の贖罪を、個人と社会がどう担い、折り合いをつけて生きてゆくかを描く。ラストシーンで物語の伝えたい意味を明かす構成に歓喜。アインシュタインとオッペンハイマーの邂逅がGood!! クリストファー・ノーランが、『インターステラー』『ダンケルク』『テネット』でつちかったテクニックを、総動員する。
シビル・ウォー(監督・脚本:アレックス・ガーランド)

『28日後…』『わたしを離さないで』『エクス・マキナ』『アナイアレイション』と撮ってきた、アレックス・ガーランドが、とうとうリアル世界のココに至ったのが感慨深い。『ドリーム』に続き、キルスティン・ダンストが、リアルな顔をさらしている。
アメリカン・フィクション(監督・脚本:コード・ジェファーソン)

皮肉に満ちた話を、コメディーに転がさず、リアルさから足を離さず、順当に進めてゆく抑制された演出に好感を持った。ラストも落し所として納得。
ルックバック(原作:藤本タツキ/監督:押山清高)

ひたむきな情熱に、あたたかい気持ちと悲しみの涙がよみがえる……疎外と自己実現とエゴと希望と……ゴチャゴチャしたつくる人の感情をかき立てる佳作。
イプセン & チェーホフ
昨年のマイブームは、イプセン。『イプセン 生涯と作品』『イプセンの手紙』(原千代海)、『イプセンのリアリズム 中期問題劇の研究』(毛利三彌)と並行しながら、中期問題劇の『人形の家』『幽霊』『民衆の敵』『野鴨』『ヘッダ・ガーブレル』を読む。
『人形の家』は、明解な構成がスバラシイ!! 手本だと思う。

アントン・チェーホフも読み直そうと、『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』を読む。ユーモア短篇から長篇喜劇へと進んだチェーホフの変化点にある、『サハリン島』(原卓也)が、素朴さとトボケた味で、興味深かった。