2020年映画ベスト と令和『ロボコン』
コロナ禍で、映画館へあまり行けてませんし、地方なので、ロードショーとも縁遠くなってしまいました。Netflixも観ていますが、予算なのか開発が甘いのか、なかなか良いと思う作品に出会えません。そんななかで、2020年の気に入った作品です。(2019年公開作も混じっています)
のぼる小寺さん
この演出は、奇跡だとおもう。静かにゆったりと「そこにある」ものを撮ることで、登場人物に同化してゆく。セリフは簡潔で、表情やリアクションで、物語を伝える。シナリオは「字コンテ」になっている。それを許した監督や出資者の懐の深さに賞賛を惜しみません。こんな実写作品は再び成立させられないのではないかと感じる、佳作。
在りし日の歌(地久天長/So Long, My Son)
こんな作品は日本ではつくれない。ハリウッドでも無理だろう。中国共産党政権のなかで、これだけ技術的な完成度の高い作品がつくられたことに驚く。お金をかける部分が的確だ。撮影監督に『冬の小鳥』『ポエトリー』の韓国人(Hyun Seok Kim)、特殊メイクに英国人チーム(Matthew Smith)、タイの(監督もやる)編集者(Lee Chatametikool)、日本からも foton が動画の若返りレタッチ技術「Age Reduction VFX」で参加している。出演者も少なく、ロケセットの杯数も少ない。浮ついたところが皆無で、ドラマと政治に、真摯に向き合っている。
マザーレス・ブルックリン
エドワード・ノートンの監督第2作。『僕たちのアナ・バナナ(Keeping the Faith)』もキャスティングの妙と、役者好みの演技の数々で、好きなのだが、そこに撮影や編集のこだわりが加わった。芝居の立たせかたが、流石に上手い。チック表現が、やりすぎとも感じるし、それを生かしてもいるし、監督&主演でないと、このキワドサは造れない。1957年に変更した時代設定は、テイストがポランスキーの『チャイナタウン』。撮影監督のディック・ポープはマイク・リー監督の全作品を撮っている人。
最高に素晴らしいこと
闇が心地良い。原題の『All the Bright Places』のほうが合ってるかな。『パーティで女の子に話しかけるには』のエル・ファニングと『名探偵ピカチュウ』のジャスティス・スミスが主役なので、やりとりのニュアンスが楽しい。脚本は『ロング・ショット』や『ペンタゴン・ペーパーズ』のリズ・ハンナ。語りすぎず、非言語の表現がゆたかで、私ごのみです。サントラを買ってしまいました。ブレット・ヘイリー監督の前作『ハーツ・ビート・ラウド』も音楽が良いヨ!
ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語
いつも通りのウィル・フェレルなのだが、レイチェル・マクアダムスが『ホット・チック』(2002)や『ミーン・ガールズ』(2004)で見せた思い切りの良いコメディ演技を見せてくれて、嬉しい。ふるさと賛歌が琴線に触れる。エンドクレジットで皆で唄っているのが、良作の証拠。(マクアダムス、40歳でこれをやれるのがスバラシイ)
囚われた国家
アメリカという経済大国のもとで、とか、中国という全体主義のもので、という重ね合わせができる、レジスタンス映画。SFは設定のための器に過ぎない。淡々と地下活動が描かれる。エイリアンの宇宙船もメタルギア風のロボットも、動かさないしキチンと見せない。そこを捨てた割りきりが貴重だと思う。
存在のない子供たち
【2019公開】 冒頭の問題提起も切れ味鋭いが、ラスト5分の展開がスゴイ。しんどい内容に耐え、終わりまで観て良かった。ラストショットも素晴らしい。最後の最後で、物語の核心を伝える。(IMDBの Top Rated Movies で観ていない作品で最高点がこれだった)
15ミニッツ・ウォー
【2019公開】 フランス資本で、こんなリアルな銃撃戦ものが観られるとは思わなかった。仕事師スナイパーの完璧な技と哲学を、堪能しました。原題の『介入(L’Intervention)』ってカッコイイけど、漢字にするとマヌケだな。紅一点のヒロイン(オルガ・キュリレンコ)がすてき。
で、番外として……
がんばれいわ!! ロボコン
ウララ~! 恋する汁なしタンタンメン!! の巻
内容はいつも通りの浦沢義雄脚本である。『ペットントン』や『どきんちょ! ネムリン』をリアルタイムで観ていた世代としては、懐かしく、嬉しい。フィルム時代ならばコマ撮りやワイヤーワークでイイ味出していたであろうアニメーションがCG処理のため安く見えるが、そこは物量で充分におぎなっている。声がアフレコなので、ビデオの質感と合っていないような……でも慣れてしまう。問題は……というか問題作として斬新なのは、エンドクレジットで監督が踊っているのだ。そんな作品、いままでにあったか?? 石田秀範監督、1962年生で満57歳である。スバラシイ!!
『イエスタデイ』(監督:ダニー・ボイル/脚本:リチャード・カーティス)、『フォードvsフェラーリ』(監督:ジェームズ・マンゴールド)、『リチャード・ジュエル』(監督:クリント・イーストウッド)も良かったのですが、今年はミニシアター系が気持ちに合いました。……で、今年のマイブーム。
スターリング・シリファント
犯罪物からパニック物まで。そこに骨太の人間ドラマを入れる、大御所!脚本家。(いまさらデスが)
1977 | 『テレフォン』(監督:ドン・シーゲル/共同脚本:ピーター・ハイアムズ) |
1974 | 『タワーリング・インフェルノ』(監督:ジョン・ギラーミン) |
1972 | 『ポセイドン・アドベンチャー』(監督:ロナルド・ニーム) |
1972 | 『センチュリアン』(監督:リチャード・フライシャー) |
1971 | 『マーフィの戦い』(監督:ピーター・イエーツ) |
1968 | 『まごころを君に』(監督:ラルフ・ネルソン) |
1967 | 『夜の大捜査線』(監督:ノーマン・ジュイソン) |
1965 | 『いのちの紐』(監督:シドニー・ポラック) |
1960 | 『光る眼』(監督:ウォルフ・リラ) |
1958 | 『殺人捜査線』(監督:ドン・シーゲル) |
メリッサ・マッカーシー
The Actors Studio でメソッドを学び、The Groundlings でインプロヴィゼーションを実践した、ツワモノ。出演作品が、脚本が監督だったり、役者あがりの監督だったりするのが、こだわりがあって嬉しい。お笑いの人だと思ってナメていると、人物造形がものすごくリアル。
2018 | 『ある女流作家の罪と罰』(監督:マリエル・ヘラー/脚本:ニコール・ホロフセナー) |
2015 | 『SPY』(監督・脚本:ポール・フェイグ) |
2014 | 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(監督・脚本:セオドア・メルフィ) |
2014 | 『タミー』(監督:ベン・ファルコーン/脚本:メリッサ・マッカーシー) |
2013 | 『デンジャラス・バディ』(監督:ポール・フェイグ/脚本:ケイティ・ディポルド) |
2011 | 『ブライズメイズ』(監督:ポール・フェイグ/脚本:クリステン・ウィグ) |