小國英雄シナリオ集はスゴイ
読め!! 読め!! 読め!!
『年鑑代表シナリオ集』を読んだって、面白いと思うのは各巻に数本だ。
『日本シナリオ大系』だって、各巻に半分もない。
伊丹万作のシナリオ集だって、山中貞雄のシナリオ集だって、すべてが面白いわけじゃない。
ところが、この小國英雄のシナリオ集は、どれもが面白い!! しかも、各々が違う顔を持っている。
昨日まで、最大の教科書は、『全集黒澤明』の、初期と末期の、黒澤明単独執筆の作品群だと思っていた。
それを5馬身くらい引き離して、今日からは、『小國英雄シナリオ集』が、オレの最高フェイバリットだ。
黒澤明脚本や橋本忍脚本には、コメディ性が無い。『七人の侍』の千秋実の薪割り流や、『椿三十郎』の入江たか子の超然とした性格、つい笑ってしまう部分は、小國英雄のモノとしか思えない。
黒澤映画に、スピードやスマートさを持ち込んでいるのも、黒澤明、橋本忍、菊島隆三……の誰かと考えると、(菊島隆三もスマートでスピーディーですが)やっぱり小國英雄になってしまう。
粋とか洗練とかは、小國英雄のモノだろう。
おもしろさの職人芸、それが小國英雄脚本だ。
ちなみに、私のお気に入りは、1960年の月形龍之介の『水戸黄門』。
この大友柳太朗と中村錦之助(萬屋錦之介)が素晴らしい。人物造形が一筆書きで、そのシンプルさが清らかなのだ。