汚名・姿三四郎「失恋したらナンでもあり」

映画黒澤明

好きな女が、ほかの男とくっついて仲睦まじくやっているのを見て、彼女が仕合わせナンだからそれで良い……などと、訳知り顔で澄ましていられるのは、たいした恋では無い。

相手に取られるならば殺してしまえ、恋敵を倒してしまえと考えるのが、恋愛の情熱ってモンじゃないか!

汚名』(アルフレッド・ヒッチコック/1946)はヒッチコックのなかでも、ウットリ度が一番高い傑作だ。イングリッド・バーグマンがチュッチュと盛んにキスを迫る。鍵のクレーンショットと、ワイン庫でのサスペンスは、まさに教科書っ!!

姿三四郎』(黒澤明/1943)はトキメク Boy meets Girl の佳作。主人公の姿三四郎(藤田進)がヒロインの轟夕起子に、自分の姓名を明かす場面の構図とサイズの的確さ!! そしてヒロインのショックを示す、サイズとタイミングのウマさ。

檜垣源之助(月形龍之介)のくやし顔

好きな女の家を訪ねてみれば、柔道家のライバル(姿三四郎/藤田進)が、好きな女(轟夕起子)の手料理で、好きな女の父親(志村喬)と和気あいあいで食卓を囲んでいる。

フザケルなっ!! ナンで俺の好きな女の家に、あのクソ野郎があがりこんで、しかも俺の柔術の師(志村喬)は、俺に見せたこともない満面の笑顔で、病気のクセに起きあがってメシを喰っている。

姿三四郎は、ハナから強くて、ハナから彼女の心を射とめていて、ハナから師からも一目置かれている。それなのに檜垣源之助は、爬虫類顔で、メフィストのような奇怪なマントを着て、登場するたびにギャグのように木枯らしが吹き荒れる。

悲劇を一身に引き受けた檜垣(月形龍之介)!!
アンタ! こそが俺の感情移入の対象だっ!!

檜垣の、姿三四郎に挑戦する気持ち、そして死をも賭けた決闘。
檜垣こそが、失意の失恋の中で、恋敵に挑戦する男の悲しいまでの意地を見せる、モノホンの「オトコ」である。
たとえ負けても、既に負けが決まっていても、(おとこ)は闘いに挑むのだ。

セバスチャン(クロード・レインズ)の困惑顔

セバスチャン(クロード・レインズ)『汚名』

むかし鼻にも掛けてもらえなかった美貌の女が、むこうからスリ寄ってきたら、そりゃ許してあげるだろうよ、つき合うだろうよ。相手はイングリッド・バーグマンだぜ。つきあえるンだったら全てを捨ててもイイと思うだろ。

自分に向いてくれたと喜んでいたセバスチャンが、アリシア(イングリット・バーグマン)とデブリン(ケーリー・グラント)の抱擁&接吻を目撃!! アリシアはデブリンが好きなのに、デブリンが冷たいので、ツラ当てにセバスチャンに身体を許して、セバスチャンの家をスパイしている設定。

セバスチャンは、アリシアの身勝手な恋の犠牲者に過ぎないンだよーう!!

本命が冷たいからって、嫉妬させるために利用されているセバスチャン。
アリシアはアメリカ国家の大義でスパイとして潜入しているわけだけど、それは大うそ!! ホントはデブリンを困らせたいだけ!!

なのに、なのに……セバスチャンは……。
セバスチャンを残して、アリシアとデブリンが仕合わせそうに抱き合って去ってゆく〜ぅ。
非道い、非道すぎるぞ、アリシア!! オンナの残酷さに気をつけましょう。 m(_ _)m


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