『野獣狩り』は観る価値アリ
君塚良一さんが『脚本通りにはいかない』(キネマ旬報社)で、まっさきに語っている、
『野獣狩り』(監督:須川栄三)をようやく観ました。確かにコレは『踊る大捜査線』の原型ですね。
突進型の主人公の刑事が、藤岡弘 → 織田裕二。
無骨な老刑事が、伴淳三郎 → いかりや長介。
警察機構の中で、上司との軋轢が展開してゆく。
とにかく、これがデビュー作になる、木村大作さんのカメラがスゴイ!!
(『八甲田山』『復活の日』や、『用心棒』の手首のフォーカスで有名)
昔、渋谷のユーロスペースで、撮影監督の高間賢治さんが「撮影監督講座」なる上映と講演のイベントをやっていて、木村大作さんの回に、木村さんが「最近、仙元誠三の手持ちがスゴイって言われてるけど、オレの方が先だし、ずっと上手いぜ」と言っていたのは納得だ。
パトカーのパトランプ越しに走る主観ショットを撮っていて、そのまま、ビルから垂れ下がる、悪者の犯行声明の垂れ幕にパン!! (車の天井に乗って、手持ちかよ!!)
主人公が運転する姿を、主人公の右側から撮っている!! (右ハンドルの右側って、カメラはどこにいるんだよ!!)
そのあと、カメラは走る、右前のタイヤにパンする!!
手持ちが6割くらいあるけど、躍動感があり安定している。
フィックスのショットも的確。のちの『誘拐』はこれの焼き直しに過ぎない。
とにかく、路地裏の追っかけの描写の豊かさは特筆に値する。
私は『踊る大捜査線』は劇場版2本を映画館でしか観ていないけれど、『野獣狩り』にあって、『踊る大捜査線 THE MOVIE』に無いのは、主人公と悪役の、同質性だ。
主人公は、悪役を自分と同じ人間だと見ている。(椿三十郎の、三十郎が室戸半兵衛を見る関係性ですね)
自分を重ね、犯人の感情に同化する部分もあるがゆえに起こる葛藤。この映画は、そこを目指しているから、活劇でありながらも、強い印象を残す。
これがプログラムピクチャーの2本立ての1本なんだもんなあ〜。プロの仕事を堪能しました。