2019映画ベスト 『パタリロ』重層なつくり
2019年のお気に入り映画は、興行的に当たったエンターテイメントばかりになってしまった。
田舎に引っ込んでしまったせいなのか、ミニシアター系の映画を観ていないわけではないのだが、繰り返し観たくなる娯楽作品が、記憶に残った。
今年のベスト1 は……
劇場版 パタリロ!
的確なカット割りと、落差やテンポを重視した編集。役者は「役を生き」チャレンジングで、音楽のパクリ感や、ダンスの振付も楽しい。すべてが確信犯で、チープを成立させ、アートにまで高めている。アバンギャルド(死語?)な怪作。(『舞台「パタリロ!」』の忠実な映画化という回りくどさが完成度を高めている)
以下、次点。
スパイダーマン: スパイダーバース
機知に富んだ、いままでに観たことのない表現を志していることが、すばらしい。「友情・努力・勝利」
バイス
政治を題材にしながら、人物の背景と動機をキチンと描いていることに好感を持った。即興(インプロヴィゼーション)でつちかった自由な編集がGOOD。
バンブルビー
青春映画として優れている。主人公を男性から女性に変えることで(ストーリーボードの主人公は男になっている)、思春期のうつろいが、より明確になった。
この伏線を使うかー! と驚きがあった脚本が好き。『スウィート17モンスター』とダブらせて観ると“吉”。
ジョーカー
シナリオの構成力が、突き抜けている。サブプロットがスキ無く噛み合わさり、無駄がない。主人公の自己実現に泣いた。予備知識なく観たので、デニーロの登場に、ハリウッドの底力を感じた。
(今年、私が劇場で「逆バコ起こし」をやった唯一の作品)
クリード 炎の宿敵
家族の、親子のドラマとして、絞り込んでいるシナリオが好きだ。
クリードや、ドラゴのことだけでなく、ロッキーの息子にまで言及している拡がりが良い。
(スタローンがシナリオに関わると、台詞にボンクラ感が加わって、イイ味になるんだよなー)
運び屋
簡潔な撮影、間を詰めすぎなほどのテンポ良い編集。表現の手本を示したイーストウッド。
結局のところ、過去からの積み重ねが、深みある作品を作り上げていると云うコトか……。
シルヴェスター・スタローンやクリント・イーストウッドという俳優であったり、スパイダーマン/トランスフォーマー/バットマンというキャラクターであったり。
『劇場版 パタリロ!』は舞台という場で、繰り返しに耐えられるように演出&役作りしたものを、同じキャストでベストテイクを選りすぐり、さらに映像的に加工しているわけだから、準備と稽古にかけた時間が違う。
今年の後半は、アダム・マッケイを中心とした、セカンド・シティ出身者の作品群が、マイブームだった。
過去投稿 →→ 昔メソッド、今はインプロヴィゼーションか
Netflixで、『アイリッシュマン』も『マリッジ・ストーリー』も『全裸監督』も観たのだが、劇場公開作にある “強引な単純化” が欠けているように感じた。
スティーヴ・コンラッドの、生きることに行き詰まった人たちが、自分を発見し、再び歩みだす話に、癒やされた。
(違う監督ばかりだけれど、物語の芯は同じ)
スティーヴ・コンラッド (Steve Conrad)1968-
脚本 | 『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』(監督:ランダ・ヘインズ /1993) |
脚本 | 『ウェザーマン』(監督:ゴア・ヴァービンスキー/2005) |
脚本 | 『幸せのちから』(監督:ガブリエレ・ムッチーノ/2006) |
脚本 | 『LIFE!』(監督:ベン・スティラー/2013) |
脚本 | 『ビジネス・ウォーズ』(監督:ケン・スコット/2015) |
脚本 | 『wonder 君は太陽』(監督:スティーヴン・チョボスキー/2017) |