サイレントは豊かで楽しくて弾けている

おかむーBLOG映画

シナリオセンターで八週間講座を受ける前、友だちに「シナリオって何を読めばいい?」と訊いたら、シナリオ作家協会シナリオ講座を受けたことのある友だちは、「新藤兼人さんが、山中貞雄伊丹万作伊藤大輔を読めと言ってた」と教えてくれた。3人のシナリオ集には、サイレント時代のシナリオが含まれている。

この10月・11月は、サイレント期の日本映画を、活動弁士付きビデオで観ることについやした。意表を突く展開、細やかな洞察力、振幅に満ちた感情…、音以外(映像と文字)で伝えるために、純化され力強くあらねばならなかった表現。一番豊かだったかもしれない日本映画群がそこにあった。

多くの作品は図書館で借りた。東京には無料で利用できる機会が揃っている。

  • DVD「Talking Silents」シリーズ(マツダ映画社)……港区立図書館
  • VHS「日本無声映画名作館」シリーズ(マツダ映画社)……台東区立図書館
  • VHS「アポロン活動大冩眞」シリーズ……新宿TSUTAYA及び港区立図書館
  • VHS「活弁キネマ」シリーズ……新宿区立図書館

今回観たものを、公開年順に並べると……

  • 小雀峠(沼田紅緑/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1923/澤登翠)
  • 逆流(二川文太郎/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1924/澤登翠)
  • 江戸怪賊伝 影法師(二川文太郎/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1925/澤登翠)
  • 雄呂血(二川文太郎/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎/1925/松田春翠)
  • 怒苦呂(白井戦太郎]/市川右太衛門/1927/澤登翠)
  • 弥次喜多 尊王の巻(池田富保/大河内傳次郎/1927/澤登翠)
  • 弥次喜多 鳥羽伏見の巻(池田富保/大河内傳次郎/1928/澤登翠)
  • 忠魂義烈 実録忠臣蔵(牧野省三/山上伊太郎/伊井蓉峰/1928/松田春翠)
  • 血煙高田馬場(伊藤大輔/大河内傳次郎/1928/松田春翠)
  • 雷電(牧野省三/根岸東一郎/1928/澤登翠)
  • 放浪三昧(稲垣浩/伊丹万作/片岡千恵蔵/1928/松田春翠)
  • 第一話 美しき獲物(マキノ正博/山上伊太郎/1928/澤登翠)
  • 崇禅寺馬場(マキノ正博/山上伊太郎/1928/澤登翠)
  • 浪人街 第二話 楽屋風呂(マキノ正博/山上伊太郎/1929/澤登翠)
  • 赤垣源蔵(池田富保/河部五郎/1929/浜星波)
  • 明け行く空(斎藤寅次郎/水島あやめ/1929/澤登翠)
  • 沓掛時次郎(辻吉郎/長谷川伸/大河内傳次郎/1929/松田春翠)
  • 血煙荒神山(辻吉郎/大河内傳次郎/1929/浜星波)
  • 大学は出たけれど(小津安二郎/田中絹代/1929/松田春翠)
  • 野狐三次(小石栄一/円谷英二/長谷川一夫/1930/浜星波)
  • 右門捕物帖 六番手柄(仁科熊彦/山中貞雄/嵐寛寿郎/1930/松田春翠)
  • 番場の忠太郎 瞼の母(稲垣浩/長谷川伸/片岡千恵蔵/1931/松田春翠)
  • 東京の合唱(小津安二郎/野田高梧/岡田時彦/1931/美好千曲)
  • 鯉名の銀平 雪の渡り鳥(宮田十三一/長谷川伸/阪東妻三郎/1931/松田春翠)
  • 御誂次郎吉格子(伊藤大輔/大河内傳次郎/1931/松田春翠)
  • 大人の見る繪本 生れてはみたけれど(小津安二郎/斎藤達雄/1932/松田春翠)
  • 恋の花咲く 伊豆の踊子(五所平之助/伏見晁/田中絹代/1933/松田春翠)
  • 瀧の白糸(溝口健二/泉鏡花/入江たか子/1933/松田春翠)
  • 出来ごころ(小津安二郎/池田忠雄/坂本武/1933/松田春翠)
  • 韋駄天数右衛門(後藤岱山/羅門光三郎/1933/澤登翠)
  • 水戸黄門 来国次の巻(荒井良平/山中貞雄/大河内傳次郎/1934/澤登翠)
  • 浮草物語(小津安二郎/池田忠雄/坂本武/1934/松田春翠)
  • 水戸黄門 密書の巻(荒井良平/山中貞雄/大河内傳次郎/1935/澤登翠)
  • 折鶴お千(溝口健二/泉鏡花/山田五十鈴/1935/澤登翠)
  • 子宝騒動(斎藤寅次郎/池田忠雄/小倉繁/1935/松田春翠)
  • 剣聖 荒木又右衛門(仁科熊彦/羅門光三郎/1935/松田春翠)

戦後の日本映画の全盛期は、1950年代中盤から1960年前後の、10年にも満たない期間だ。
それを支えたのが、サイレント期からの監督である、溝口健二小津安二郎成瀬巳喜男マキノ雅弘ら。そしてサイレント期に10代を過ごした、黒澤明木下惠介たちである。

『子宝騒動』斎藤寅次郎(1935)

『子宝騒動』斎藤寅次郎(1935)

ラストの闘いは、『七人の侍』を越えている!!

泥まみれになっての肉弾戦!! 黒澤明『七人の侍』(1953)は、この作品のリスペクトかも???(うそ)

『雷電』牧野省三(1928)

雷電はあまりにも強いために人々からうとまれている。母の遺言で、次の試合は負けると誓わされる。負けるつもりだったのに、相手として現れたのは、相撲を見たこともないヒヨッ子。このヒョロヒョロを相手に、雷電は負けなければならない。

すばらしいプロット!!

『雷電』牧野省三(1928)
若き役者時代のマキノ正博雷電

対戦相手を演じているのが、役者時代のマキノ正博。細やかな動作と明快な表情で、技巧派の役者だったと納得させられる。この人ならば、監督として芝居をつけるのも、さぞや巧かったことだろう。

突貫小僧

惹きつけられる圧倒的な魅力をもつ、突貫小僧こと青木富夫(1923年生)。不貞不貞しい顔で、ドラマに重要なアクセントを加える。(ちんこかゆい)

高勢実乗

『血煙荒神山』辻吉郎(1929)
『血煙荒神山』辻吉郎(1929)
『国士無双』伊丹万作(1932)
『国士無双』伊丹万作(1932)
『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』山中貞雄(1935)
『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』山中貞雄(1935)
『東京五人男』斎藤寅次郎(1945)
『東京五人男』斎藤寅次郎(1945)

喜劇的に誇張された、動き・メイク・しゃべり方が際立つ、高勢実乗


映画が大衆を魅了し、産業として成立したわけが、活動写真を観ると理解できる。
映像表現の基本はサイレント映画にあると思い知らされた。

おかむーBLOG映画